［京王〜種別幕・方向幕 特集］

■京王9000系　側面LED式表示器の製作

PCでの再現LED表示は、作成され公開している方々が多くいらっしゃいますが、リアルLED表示器を製作し公開している方は少ないように思います。特に京王線は少ないようです。 できたらいいな〜ということで、以前から気になっていたLEDマトリクスパネルを使って、「京王9000系 側面LED式表示器」の製作に挑戦してみようと思います。 大変そうですが、ものづくりは大好きなのでワクワクします。 　　　　　写真右：9000系 LED式表示器 1/1スケール完成品

●LEDパネルの研究 １．京王9000系の側面LED式表示器 　京王9000系車両の表示器はフルカラーLEDを搭載。 LEDパネルの画素数は、縦32ピクセル、横144ピクセルで、4608ピクセルです。ピッチは4mm(P4)です。ピッチとは並んでいるLEDの間隔のことで、ひとつひとつのLEDが4mm間隔で並んでいるということです。従って9000系のLEDパネルの大きさは、およそ縦4×32＝128mm、横4×144＝576mmとなります。

写真左：実車の表示器。細かい点のLEDが、縦32個、横144個並んでいる。

２．LEDパネルの入手 　9000系のサイズが分かったところで、LEDパネルを入手します。市販されているフルカラーLEDパネルは、RGB-LEDマトリクスというもので、32× 144というサイズのものはなく、32×64が主流です。LEDパネルはつなぎ合わせて使うことができます。しかしその場合、同じサイズのパネルで揃えないとうまく動作しません。従って、一番近いサイズになるように、「P4 RGB 32×32」のパネルを5枚つなぎ合わせることにしました。32×160ピクセルということです。 その他、LEDパネルを点灯させるには、制御用の回路（基板)、接続ケーブル、電源ケーブルなどが必要となります。購入は、東京秋葉原の「akiba LED ピカリ館」です。※現在は一部取扱がないものがあります(2024.8)

写真上：32×32LEDパネル5枚(表/裏)

３．LEDパネルの点灯 　LEDパネルは、基本的には何かしらのプログラムデータを転送しないと、電源をつないだだけでは光りませんが、とりあえず、LEDパネル1枚(32×32)を使って、実験的に点灯させてみます。ここで挫折される方々も多いようです。

写真上：�@パネル裏側　�A制御基板　�Bケーブル類　�Cパネルと制御基板の結線 パネルの裏は、電源の入力、制御信号の入力と出力の接続端子があり、フラットケーブルで基板と接続します。　 電源は直流５Vで基板とパネルに供給します。このパネルでは、最大15Wで定格電流は３Aとなります。 ちなみにRGBパネルでは、発光色と点灯ドット数で消費電力は変化し、白色で全ドット点灯が最大電力となります。従って、最大電力を供給できるアダプターなどの電源が必要となります。極性を間違えると故障するので何度も確認します。 まずは、制御データなしで何かが表示されるか試してみます。すると写真�Dのように点灯しました。 今回使用した制御基板は、中国製のHUB75制御というもので「Raspberry Pi」などの専門知識がなくても、ちょっとした設定とLEDマトリクスに関する知識があれば扱えるということだったので、今回使ってみることにしました。

写真上：�Dとりあえず点灯　　�E制御用ソフト　　�Fカラーグラフィックの表示　　�G日本語文字の表示 この制御基板は、メーカーの制御用ソフトでも動作するということでダウンロードして使ってみましたが、中国人の感覚で作成されたソフトで、いろいろといじり回している間に何となく分かってくるという感じです。理解するまでに少々時間が掛かりましたが、分かってくると写真�Fのようなグラフィックや、写真�Gのような文字もカラーで表示することができます。

４．京王9000系表示器への一歩 　LEDパネルを5枚つなげてみます。信号用のフラットケーブルは、入力→出力で5枚のパネルを直列につなぎ、各パネルに電源５Vが供給されるように配線します。極性(±)を間違えると壊れるので何度も確認します。パネルには固定用のネジ穴が埋め込んであるので、穴をあけた金属板でパネル同士の隙間ができないようにつなぎ、ネジで固定します。 5枚での表示できるように制御基板の設定を変更します。

写真上：�HLEDパネル5枚連結　　�I京王ロゴ　　�J急行種別表示 　まずはグラフィック機能を使って「KEIO」ロゴを表示させてみましたが、制御がうまくいかず、写真�Iのようにバックの白がぬけてしまったり、KEIOの文字がはみ出ていて少しぼやけています。もう一度設定をやり直し、種別表示「急行」を表示させてみました。写真�Jのように、「急行」はきれいに表示できましたが、右に白いものが出ています。 何度かいろいろと試しているうちに、ようやくコツを掴んできて正常表示が出来るようになりました。 　ちなみに、正確な電圧を掛けないとノイズの原因になるようです。AC-DCアダプタは若干高めの電圧に設定されていることが多くノイズ源になるため、製作には電圧を微調整できるスイッチング電源を使用することにしました。

●表示データの作成 　初めは画像データを転送して表示していましたが、試行錯誤の結果、LEDの点灯をひとつひとつを制御して表示させると文字がくっきりと表示され、実車そのものの表示ができることがわかりました。少々気の遠くなる作業ですが、ゆっくりと楽しみながら地道にデータ作成をしていきたいと思います。 １．9000系実車表示写真の収集 　実車と同じように表示させるために、実車のLED表示の写真を集めます。種別表示は種類が少ないので比較的すぐに集めることができます。行き先表示は数が多いので、ネットで調べたり、実車の写真を撮りに行ったりとできるだけ多くの種類を集めます。不謹慎ではありますが、珍しい表示は運行が乱れた時がチャンスです。また、夜の方が反射が少なくきれいに撮影できます。楽しみながら1年くらい掛けて集めました。平行して表示データの作成にも取りかかります。

２．種別 表示データ作成 　データ作成といっても、Windows付属ソフトの「ペイント」を使ってお絵かきをするだけです。 下図のようにペイントにて32×160の枠を作り、集めた写真を参考に、マス目を数えながら1点1点塗りつぶしていきます。種別はどれも32×48(赤のライン)で収まるはずです。ずれる場合はどこかにミスがあります。確認しながらペイントしていきます。色については、あとで変更ができるので近似色で作成しておきます。データはJPEGだとフチがぼやけるのでBMPで保存します。

写真上：ペイントでドットを塗りつぶす

写真上：写真を見ながらドットを数えて描き写す

写真左： 作成した種別表示BMPデータ

３．行き先 表示データ作成 　同様に、ペイントで作成します。行き先は基本的に白のみでペイントしていきます。横方向の49ピクセルから144ピクセルが、行き先表示の範囲になります。実車写真を見ながら、忠実に描き写していきます。 当初はまだ、LEDの点灯範囲を制限するやり方が分からなかったので、32×160の全点灯範囲のうち、32×144にするために不要の145〜160ピクセルの部分を「黒」で設定することで点灯しないようにデータを作成しました。 行き先は作成数が多いので、地道に暇つぶし的にやっていきます。慣れてくるとパターンが分かってくるので、塗りつぶす速度も上がってきます。また、同じ文字はコピペを使って作業すると気が楽になります。 　今回は、ディスプレイ的な表示にしたいので、種別と行き先を別々に制御せずパターン化するため、データも種別と行き先を同時に配置していきます。変わる表示はGIFデータを作成します。

写真左：作成した表示BMPやGIFデータの例。表示したいパターンを種別と行き先をコピペして作成します。右側余白分32×16ピクセルだけ長くなっています。