TAMA KING BEAT 8588 Chrome metal IMPERIALSTAR

このスネアは「TAMA」ブランド初のモデルで、1972年に「Star」ブランドで登場した初代「KING BEAT」のマイナーチェンジ版である。サイズは14×5インチのみ。大きな変更はないものの「Star」から「TAMA」へ新ブランドを設立した際、ラグのデザイン変更や「TAMA」ブランドの「Tバッヂ」などを導入し商品力をアップした。シェルやストレイナーなどの基本部分は初代モデルを踏襲する。また「Star」の名は「IMPERIAL STAR」や「ROYAL STAR」「SWING STAR」などのグレード名に残し展開していく。　シェルはローラープレス機で円筒状に曲げたあと溶接でつなぎ合わせるタイプで、当時ではオーソドックスな製法。溶接部は接合後グラインダーで平滑に研磨され、見た目やサウンド面でも影響のないよう配慮されている。シェルのセンター部分には二本のプレスライン。その間にバーチカルローレット加工が施されている。シェル全体をクロームメッキ処理した後、さらにシェル内面をシルバー塗装するなど、丁寧で緻密な作りは現代にも継承されている。

写真上：KING BEAT 8588専用のスナッピー。後のモデルチェンジ版KING BEAT(8005，8006)とは形状は同じだが、取付け部分(スナッピーエンドプレート)の穴距離が10mm程異なるため互換性がない。 交換部品(スナッピー)がないこともオーナーの悩みのひとつ。

写真上：スイッチを操作すると、スナッピーは2本のフレームロッドごと左右が平行に上下する。写真上がON、写真下がOFFの状態。上下のストロークは10mmほど。ONの状態ではフレームロッドとスナッピーのクリアランスが4〜4.5mm程度になるため、セッティングや叩く強さによってはスナッピーがロッドに接触することがある。

写真上：2本のロッドで左右のストレイナーを強固に繋いで一体化させ、白い凸形の部品をガイドに左右のストレイナーが平行に上下する。 動作は、スナッピースイッチを介したリンクが、シェル内部を通る回転ロッドを通じて反対側のリンクに動きを伝え、左右のストレイナーを同時に動かす仕組み。 この構造上、サイドヘッドの交換時は、一部をバラす必要があり少々面倒。

写真上A、B： シェル厚が1.6mmなことと、構造が複雑なため若干重め。質量は約5.8kg。

写真A.B： ストレイナーには初期からのStarのロゴが残る。この後1976年に「TAMA」に変わるが、1977年にはモデルチェンジするため、TAMAロゴは稀少なのかもしれない。 写真C： テンションロックナットが標準装備されている。これもやはりモデルチェンジで消滅する。

写真上�@： シェルの内部。溶接した後、グラインダーで均した後が見える。 写真上�A： エッジのＲは大きく、R4-45度。 写真上�B： ストレイナーリンクの動き。ロッドリンクが90度回転することにより、約10mmの距離でON-OFFを行う。機構には一部プラスチック部品が使われ、経年劣化により不具合のある個体も多い。

2024.1.8掲載